毎月のクラスだより。書き始めると、季節の挨拶で手が止まる。今月のねらいをどう書くか悩む。気づいたら30分、1時間。そんな夜を、何度も過ごしてきました。
私が担任をしていたころ、おたよりはまとまった時間がなかなか取れず、3〜4日かけて少しずつ書いていました。月末や週末が締め切りなので、金曜や月末にタイミングが集中して、そこに修正も重なってくる。振替休みで担任が一人のときは、子どもを見ていれば書類に手はつかないし、書類に向かえば子どもの方が見られない。雨が続いて子どもたちが体力を発散できず荒れ気味の日は、なおさら大変でした。
それでも頭のどこかには、いつも「書類やらなきゃ」がいる。子どもの前にいるのに、気持ちが100%そっちに向かない。「私、子どものために働いているのに、書類のために残ってる」——そう感じた経験は、私だけではないはずです。

「書類しんどい」は、私が一緒に働いてきた保育士さん、ほぼ全員が口にしていた共通の悩みでした。あなただけが要領が悪いわけでは、決してありません。
だからこそ、はっきり書いておきたいことがあります。AIを使うのは「手抜き」ではありません。書類を早く終わらせて、子どもの前にちゃんと立てる自分に戻るための道具です。楽をしたいのではなく、本来向き合いたかった時間を取り戻すだけ。
この記事では、月のおたよりの「下書き」が体感で10分ほどで終わるプロンプトを、まるごと置いておきます。コピペして3か所だけ書き換えれば使えます。あわせて、保育士が見落としがちな「個人情報の線引き」も、丁寧にお伝えします。
なぜ「おたより」はAIと相性がいいのか


数ある保育の書類の中でも、おたより(クラスだより)はAIに下書きを頼みやすい書類です。理由は大きく2つあります。
- おたよりは「クラス全体の様子」を伝えるもの。個人の細かい情報がなくても成り立つ
- 毎月の型(季節の挨拶→ねらい→クラスの様子→お願い)が似ているので、AIが下書きを作りやすい
連絡帳のように一人ひとりの記録が必要な書類は、個人情報の扱いが難しくなります。でも、おたよりは違います。「クラスのみんなが、こんなふうに過ごしました」をまとめるものなので、個人を特定する情報を入れずに書けるのです。ここがAIと相性のいい大きな理由です。
私の場合、担任時代はおたより1本に3〜4日かけていました。それが、型を決めてAIに下書きを任せられるようになると、最初のたたき台はぐっと早く出てきます。もちろん仕上げの時間は別ですが、「真っ白な画面の前で手が止まる」あの時間が減るだけでも、気持ちはずいぶん軽くなります。
使う前に知ってほしい「安全の線引き」


AIで時短する前に、ここだけは必ず押さえてください。便利さよりも先に、子どもと保護者を守ることが大前提です。
AIに入れてはいけない情報
次のような、個人が特定できる情報はAIに入力しないでください。
- 子どもの名前・あだ名(「〇〇くんが転んで」はNG)
- 保護者の名前・連絡先
- 個人が特定できる出来事(持病・アレルギー・家庭の事情など)
- クラス名や園名と組み合わせると個人が分かってしまう情報



「ちょっとした一文だから大丈夫」が一番こわいです。AIに入れた情報は、自分の手元だけにとどまるとは限りません。迷ったら入れない、を徹底してください。
おたよりは「個人情報なし」で書ける
ここが、この記事で一番伝えたいところです。おたよりはクラス全体の様子を書くものなので、個人の情報を入れなくても、ちゃんと書けます。
たとえば「〇〇くんがかたつむりを見つけて喜んでいた」ではなく、「子どもたちが傘をさして、かたつむりを探す姿が見られました」と書く。主語を「子どもたち」「お友だち」にするだけで、温かさはそのままに、個人情報を外せます。これはAIを使う・使わないに関わらず、おたよりを書くときの基本でもあります。
つまり、おたよりは「もともと個人情報を入れずに書ける書類」。だからこそ、線引きさえ守れば、AIを安心して使えるのです。
園・自治体のルールも必ず確認する
園や自治体によっては、業務での生成AIの利用にルールを設けている場合があります。「AIを使ってもいいか」「どのツールならいいか」は、自己判断せず、必ず園の方針や自治体のガイドラインを確認してから使ってください。安全に使うための、これも大事なひと手間です。
コピペで使える「月のおたより」プロンプト


お待たせしました。ここからは、実際に使えるプロンプトです。難しい設定はいりません。コピー→3か所書き換え→貼り付け、の3ステップだけです。
ステップ1|このプロンプトをコピーする
あなたは保育園のおたより作成をサポートするアシスタントです。
以下の条件で「月のクラスだより」の下書きを作ってください。
# 基本情報
- 対象クラス:年中(4歳児)クラス
- 月:6月
- 文字数:400〜500字程度
# 含めてほしい要素(この順番で)
1. 季節の挨拶(梅雨・雨・かたつむり・あじさい など6月らしい話題で2〜3文)
2. 今月のねらい(保育のねらいを保護者にわかる言葉で1〜2文)
3. クラスの様子(※具体的な子どもの名前は出さず「子どもたち」「お友だち」と表現)
4. 保護者へのお願い(持ち物・体調管理など、季節に合った内容を1つ)
# 文体のルール
- 保護者に語りかける、やわらかい「ですます調」
- 専門用語は使わず、誰が読んでもわかる言葉で
- 個人名・個人が特定できる情報は一切書かない
- 絵文字は使わない
まずこの条件で1案出してください。
プロンプトの中に「個人名は書かない」とあらかじめ指示を入れているのがポイントです。AI側にも線引きを伝えておくことで、より安心して使えます。
ステップ2|3か所だけ書き換える
あなたのクラスに合わせて、直すのはこの3か所だけです。
| 書き換える場所 | 例 |
|---|---|
| 対象クラス | 年中(4歳児)→ あなたの担当クラス |
| 月 | 6月 → 今の月 |
| 季節の話題 | 梅雨・あじさい → その月らしいもの |
それ以外はそのままでOKです。慣れてきたら、文字数や「お願い」の内容を自分のクラス向けに調整してみてください。
ステップ3|AIに貼り付ける
あとは、GeminiでもChatGPTでも、使えるAIに貼り付けて送信するだけ。十数秒で、下書きが返ってきます。次の章で、実際にどんな文章が出てくるかを見てみましょう。
AIはこんな下書きを返してくれます(6月クラスだより例)


上のプロンプトを貼り付けると、たとえばこんな下書きが返ってきます。
6月のクラスだより(年中組)
雨の音が聞こえる季節になりました。園庭のあじさいも少しずつ色づき、子どもたちは「かたつむりさんいるかな?」と傘をさして探す姿が見られます。じめじめした日が続きますが、お部屋の中でも元気いっぱいに過ごしています。
6月は「身のまわりのことを自分でやってみる」を大切にしています。雨具の着脱や、汗をかいたら自分で着替えるなど、できることが少しずつ増えてきました。
先日は、みんなで紙のかたつむりづくりに挑戦しました。「ぼくのはおおきいよ」「これはあかちゃんかたつむり」とお友だち同士で見せ合いながら、思い思いの作品ができあがりました。
蒸し暑い日が増えてきます。汗をたくさんかきますので、着替えの補充をお願いいたします。あわせて記名のご確認もお願いいたします。
季節の挨拶・ねらい・クラスの様子・お願い、という型がきれいに整っています。個人名は一つも出てきません。それでいて、ちゃんと「保育のおたより」の温度があります。ここまでが、体感で10分かからないくらい。真っ白な画面とにらめっこしていたあの時間が、たたき台のチェックから始められる時間に変わります。
最後のひと手間:下書きは「8割」、残り2割は保育士が足す
ただ、AIの下書きはあくまで「8割」だと思ってください。残りの2割——あなたのクラスにしかない、本当のエピソードは、あなたが足してください。
「〇〇な姿が見られました」の部分を、実際にあった出来事に書き換える。みんなで育てているお野菜のこと、雨上がりに見つけた水たまりのこと。そのクラスを毎日見ている保育士にしか書けない一文を加えるだけで、おたよりは一気に「このクラスのもの」になります。
このときも、ルールは同じです。個人名は出さず「お友だち」「子どもたち」で。エピソードを足すときこそ、つい名前を書きたくなるので、ここだけは気をつけてください。
AIに全部を任せないのには理由があります。日付や持ち物のような事実は人が最終確認しないと間違いが残りますし、何より、保護者に届く温度は人がつけるものだと、私は思っています。AIはたたき台を出すところまで。最後の仕上げは、子どもを毎日見ているあなたの仕事です。
同じように書類に追われている保育士さんへ
おたよりに追われていた夜、私がいちばん苦しかったのは「時間がない」ことより、「子どもの前にいるのに、子どもに集中できない」ことでした。書類のことが頭から離れず、目の前の笑顔を、ちゃんと受け取れていない感覚。あれが、いちばんつらかったのです。
AIで時短するのは、楽をするためではありません。書類を早く片づけて、子どもの前に、ちゃんと立てる自分に戻るためです。下書きをAIに任せた分の時間で、もう一人、子どもの目を見て話せたら。今日の「できた!」を、その瞬間に一緒に喜べたら。取り戻したいのは、きっとそういう時間のはずです。
まずは来月のおたよりで、上のプロンプトを一度だけ試してみてください。合わなければやめればいいだけ。少しでも肩の力が抜けたら、それでこの記事の役目は果たせています。同じように悩んでいる先生がいたら、この記事をそっと送ってあげてください。
このブログでは、元保育士で3児の母、そして約3万人のAIコミュニティで講師をしている私が、「保育士が”安全に”AIで時短する方法」を発信しています。個人情報を守りながら、子どもに向き合う時間を取り戻す。そのための、現場目線のAIの使い方を、これからも届けていきます。
